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英国の法人税率と繰延税金資産負債

英国の法人税率や個人の基礎控除などの事項は、「Budget」と呼ばれるもので決定されていきます。

先日、Budget2020というものが発表になり、ここで法人税率に関する決定がありました。

19年度の法人税率は19%であり、先進国の中でもかなり低税率で競争力のある法人税率ですが、当初2020年の法人税率は17%に下げると言われていました。

(2010年の時の税率が28%ですので、すごい勢いで下げたわけです。英語圏であること、そして税率も考えるとビジネスをする上では英国は恵まれた環境にあるわけです。


これを覆して、2020年の法人税率は19%で据え置きとなりました。

これは現首相のBoris Johnsonが選挙中に公約として挙げたものでした。

据え置くことで得られる税収はNHS(National Health Service)という国営の医療機関に使われるそうです。

奇しくもコロナウイルスが猛威を振るっている中で、それをサポートする形になったわけです。


しかし、急に税率が変わると困ることもあります。


繰延税金資産負債の残高が急に変わってしまいます。


これまでは将来の法人税率が17%であることで、例えば繰延税金負債を

1,000,000x17%=170,000 でBSに計上していたものが、このBudgetにより、

1,000,000x19%=190,000 でBSに計上を求められます。

そうすると負債が20,000増えて、繰延税金費用として20,000の損が出てしまいます。


では、その繰延税金費用を認識するタイミングはいつか?

UK GAAPにおいては以下のように明確に定められています。


A UK tax rate shall be regarded as having been substantively enacted if it is included in either:

a )a Bill that has been passed by the House of Commons and is awaiting only passage through the House of Lords and Royal Assent; or

b )a resolution having statutory effect that has been passed under the Provisional Collection of Taxes Act 1968.


というわけで、いわゆる下院(庶民院)を通過した時か、あるいはTax act、つまり税法のProvisional collectionというのをしたタイミングでの認識になるそうです。


今回の変更はBrexitあり、コロナありで非常に後手後手で決まっているので、おそらくこれらの条件を満たすのは4月以降になります。

そうすると、4月1日時点では税率は17%なんだけど、例えば4月15日で過去に遡求して税率を19%にする、とかいう不思議なことも起こるかもしれません。


3月以内でこれらの決定が起これば、先ほどの例でいうと損の20,000は3月側の決算に入り、4月にこれらの決定が起これば、損の20,000は次年度側の決算に入るわけで、企業にとっては年度末の決算や予算を占う上でかなり頭の痛い問題が起こったということになります。


加えて英国は税務上でCapital allowanceという加速償却が認められているため、固定資産の多い会社は繰延税金負債が膨らむ傾向があります。ですのでその金額が増えるというのはPL上においては大問題になります。キャッシュフローは変わらないので、キャッシュフロー経営をしている会社は気にしないかもしれませんが。


Capital Allowanceや繰延税金資産負債ってそもそも何?的な事はまた別で解説してみようと思います。




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